ツマの幼き頃の記憶と、バルセロナ。
私(ツマ)の小学校は、5・6年生の2年間クラス替えがありませんでした。
ある程度クラスの雰囲気が定着してきた6年生の初夏、
突如舞い込んだニュースによって、クラスが大きく揺らぐことに。
スペイン・バルセロナから、転入生が来る!というのです。
その子は、お父さんの仕事の都合で、幼稚園から小学6年の春までバルセロナで生活。
これまたお父さんの転勤で日本へ帰国してくることになったという帰国子女。
外国籍の子もハーフの子もいない、地方の小さな町にある小学校にとって、
帰国子女が転入してくるというのは、とてもすごいニュースでした。
ちょうどバルセロナオリンピックが開催されて日の浅い頃で、
「バルセロナって、テレビで見ていたあの街だよ!」と、クラスのみんなで盛り上がったものです。
転入生を待つ私たちの期待ばかりが勝手にどんどん膨らみ、
彼女が家族と転校手続きに来ている!と聞けば、彼女を一目見ようとみんなでゾロゾロ。
転入してきてからも、大歓迎ムード。
日本国内の別の小学校から転入してきた子への対応とは明らかに違う、特別感がありました。
帰国子女という肩書をのぞいても、明るく快活で、笑顔の素敵な女の子。
その笑顔に引き寄せられるように、
きっとみんなが次々と彼女にバルセロナについて質問をしていたと思うし、
彼女の話を聞く度に「おー!スゲーーー!!」という反応をしていたと思います。
彼女にしてみたら、私たちのそんな行動がとても不思議に映っていたことでしょう。
結果、私たちは彼女に居心地悪い環境を作り上げてしまっていたのかもしれません。
彼女が私たちの学校に登校するようになってしばらくした時のこと。
何気なく私は聞きました。「やっぱり日本が良い?」
すると、彼女は「う~ん、バルセロナが良いかな!」と笑顔で答えたのです。
その衝撃たるや、ビックリしたあの自分の気持ちを今でもはっきりと覚えています。
「日本人なのだから、日本が住みやすいはず」と勝手に自分の中で思い込んでいたのですが
幼稚園児の頃からバルセロナで暮らしてきた彼女にとって、
バルセロナでの暮らしは決して特別なものでなく、彼女の当たり前の日常だったのです。
彼女にとってのバルセロナから日本への転校は、
日本国内での転校と何も変わらないことだったはず。
にもかかわらず、勝手にチヤホヤ。特別扱い。
彼女に悪いことをしてしまったなぁという気持ちが残り、
今でもこの エピソードをたまに思い出すと、心の奥がサワサワします。
でも当時の幼き頃の私たちの行動も、悪気があることではなく
仕方のないことだったのかなとも思うのです。
自分が海外で暮らすということなんて、自分の人生をどうひっくり返したところで
想像だにできなかった私たちにとっては、日本の小さな地域で暮らすことが日常で、
「バルセロナって、テレビで見ていたあの街だよ!」なのですから。
海外は行ったことのない、素敵な、特別なものだったのですから。
転入生の彼女との出会いが、
私にとっては “海外で暮らすということ” に人生で初めて触れた経験で、
とてつもなく大きな衝撃をもたらしたことは言うまでもありません。
それから20年の月日が流れ…
人生とは面白いもので、今私は海外生活を送っています。
2年目ともなると、ドイツの景色がすっかり日常。
ミュンヘンにもフライジングにも、日本に縁を持つお子さんがたくさん暮らしていますが、
そんな子ども達の姿を見かけるたびに、彼女のことを思い出します。
彼女もこんな感じでバルセロナで育っていたんだろうなぁと。
ドイツで暮らしている子にとっては、日本人だとしてもここの暮らしこそが当たり前。
海外で暮らしていようが、どこで暮らしていようが、
その子にとって何ひとつ特別なことではないのですよね。
勝手に特別扱いする私たちの行動が、彼女の目にどう映っていたのか。
「バルセロナが良いかな!」という言葉が、どうして出てきたのか。
今なら、頭での「理解」ではなく、経験からの「実感」ができるなぁと。
今彼女と久しぶりに再会したら、どんな話になるのだろう。
あの頃とはまた違う会話ができるようになるのかな。
ふむ。
色んな感情が紡ぎ合って、ひとつの線につながったような気がするのでした。
…
…
…
って、「新年早々、何言ってるんだ」ですよね。
実は、昨夜からスペイン・バルセロナに来ています。
小学生の頃、大きな衝撃とともに自身にインプットされたバルセロナという街を
今回初めて訪れられるということに、一人なんだか感慨深さを覚えています。
それでは数日間の街歩き、楽しんできます!
今日も遊びに来て下さって、Muchísimas gracias!
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